痔の原因と痔に対する鍼灸治療
投稿日:2017年11月29日
こんにちは!
横浜 旭区 希望ヶ丘のうさぎ鍼灸整体院のタテノです!
先日漢方薬のセミナーに参加してきました。
今回のテーマは「腰痛、痔、虚労(疲労感)」でした。
その中で、今日は「痔」について書いていきます。
痔とは?
痔とは、肛門の粘膜や周囲の皮下において血液がうっ血していぼのように腫れたり、
それが排便時に切れて出血したり、
傷口から化膿して炎症を起こしたりするものです。
西洋医学的な治療では、炎症を抑える薬を投与したり、手術が選択肢になることもあります。
痔の原因
①飲食の失調
暴飲暴食、特にお酒の飲みすぎ・辛いものの食べ過ぎが原因で、胃腸の機能が低下し、「痰湿(たんしつ)=体にとって病的な水分」が生まれ、それが長期に停滞して熱化して起こる。
②大便の失調
長期にわたる便秘や下痢などが肛門周囲組織を長く刺激して、腸壁を圧迫して血流を阻害して起こる。
③運動の失調
長時間のイスに座ったままの生活などで、肛門周囲がずっと圧迫されて血流が停滞して起こる。
④妊娠・多産
妊娠・出産により、肛門の血流が圧迫されて起こる。
⑤慢性疾患
内臓疾患などで腹部にしこりができ、それにより血液の流れが圧迫されて起こる。
血流の滞り=瘀血(おけつ)です。
ほとんどの場合、この瘀血が原因です。
東洋医学(中医学)な痔の治療
・熱が原因の時
熱邪(熱の邪気)が体に入り込んで、特に血に熱が入って起こる。便の水分が乾燥して、便秘を伴うことが多い。
→体の熱を取り除いて、血を冷やし、便通をコントロールする。
→漢方薬→→大黄牡丹皮湯もしくは桃核承気湯
・暴飲暴食で湿熱が原因の時
湿邪と熱邪が腸内に入り混じって停滞して起こる。腫れて重く痛むのが特徴。口臭が強い。舌の苔がべったりと厚い。
→体の熱と湿(余分な水分)を取り除く
→漢方薬→→竜胆瀉肝湯もしくは茵蔯蒿湯
・気血不足の時
エネルギー不足、血不足によって起こる。内臓を持ち上げてとどめておくエネルギーが不足しているので、脱肛を起こしやすい。血を血管内にとどめておく力が不足しているので出血しやすい。下腹がポッコリ出ている体型の人に多い。
→気(エネルギー)を補い、止血する。
→漢方薬→補中益気湯もしくは乙字湯
・切れ痔で傷ができているときには、その部位への塗り薬として、
「紫雲膏(しうんこう)」が効果的です。
痔の漢方薬は乙字湯!?
痔の漢方薬として「乙字湯(おつじとう)」が有名です。
しかし、全ての痔に効果があるわけではありません。
上記の通り、痔の原因によって治療法が異なります。
乙字湯が効果があるのは、気血不足による痔のみです。
乙字湯は、昇提、清熱、瀉下作用があります。
昇提作用は、内臓を持ち上げて本来のポジションにとどめる力を発揮させること、
清熱作用は、熱を取り除くこと、
瀉下作用は、便を出しやすくすることです。
便を出しやすくする大黄という生薬が入っているので、便がゆるい傾向にある方には使いません。
ということで、痔だから乙字湯を飲もうと安易に考えるのはやめてくださいね。
最近は暴飲暴食で痔を起こしている方が多いようですので、
その原因の方には竜胆瀉肝湯がオススメです。
自分のタイプがどれかわからないという方でも(暴飲暴食の自覚がない方も…)、
脈・舌を診てコチラで判断するので、安心してくださいね。
痔に対する鍼灸治療
治療のポイントは血流改善とうっ血予防と排便コントロールです。
鍼灸でうっ血している部分の血流をスムーズに流してあげることが大切であり、
そしてうっ血を起こさないように、全身の血流を改善したり、胃腸の機能を高めたり、気を引き上げたりということも不可欠で、スムーズに排便できるように整えることも必須です。
文献では痔の周囲(肛門周囲)に鍼をすると書かれているものもありますが、
恥ずかしさもあってなかなか現実的ではないですよね。
ですので実際は、骨盤周囲や腹部、手足、頭のツボを使って鍼灸治療を行います。
骨盤周囲に鍼灸を行う時は少し下着を下げさせてもらいますが、必要最小限の露出にしますので、ご安心ください。
特に頭のてっぺんにある「百会(ひゃくえ)」というツボへのお灸をよく行います。
(髪の毛をかき分けて、ごくごく小さいお灸を頭皮に対して行います。髪の毛には全く影響はありませんので、心配不要です!)
生活習慣改善
漢方薬や鍼灸治療でせっかく痔が改善されても、
同じような生活習慣をしていたら、また痔を繰り返してしまいます。
なので、繰り返さないためには生活習慣の改善が必要不可欠です。
暴飲暴食をやめる
お酒を控える
辛い物を食べ過ぎない
甘いものは控える
適度に運動する(長時間座りっぱなしにしない)
適度に水分をとる
などです。
また感情のコントロールも関係があります。
「怒り」の感情は、気の流れを滞らせ、血を滞らせたり、熱を生み出したりします。
肛門でうっ血すれば、それが痔になるということです。
自分の価値観が強すぎると、それに当てはまらないことは怒りに繋がってしまいますので、
自分の価値観をおおらかにするということも大切になりますね~。
痔のことは、恥ずかしくって人に言いづらいお悩みかもしれませんが、
適切に治療をして、そして生活習慣を改善していけば、
痔のお悩みを解決できます。
恥ずかしがらずにお気軽にご相談ください!!